近年、企業では一方的に知識を教えるティーチングによる人材育成だけでなく、1on1ミーティングやコーチングのような対話による人材育成が必要だと叫ばれています。
対話スキルが必要だと分かったはいいものの、対話と言っても実際に何をどう話せばいいの?と疑問に思う方や、実際にやってみてもなかなか成果が出ずに困っているという方も多いのではないでしょうか?
そこで、本書「対話型マネージャー 部下のポテンシャルを引き出す最強育成術」では、何を話せばいいのか?どう話せばいいのか?を「すり合わせ9ボックス」というフレームワークで詳しく解説してくれています。
これを読むことで、明日から部下との対話がうまくいき、部下のパフォーマンスも上がることでしょう。
今こそ、この「対話」が上手にできる「対話型マネージャー」が社会で求められています。
どんな人にオススメの本か?
・対話が苦手な人や部下とのコミュニケーションが苦手だと思っている人
・部下のモチベーションが上がらず、なかなか成果に繋がらず困っている人
・対話スキル、コーチングスキルを体系化して部下に伝えたい人
対話という抽象的なものを「超具体的」かつ「分かりやすく」解説してくれた本
この本を一言で言うと、「対話スキルという抽象的なものを超具体的、かつ分かりやすく解説してくれた初級から上級者まで必読の本」です。
特に、例文に対して、フレームワークのこの部分を使っているよと事細かに解説してくれているので、超絶分かりやすかったです。
以下、本の見出しです。
今、組織では対話できるマネジャーが求められている【第1章】
なぜ、組織において対話が必要なのか
・選ばれるために、企業は「対話」にたどり着いた
・対話を始めた組織で、部下が思いを語り始めた
・対話型マネジャーが組織の未来をつくる
・1on1ミーティングはブームで終わるのか
【第2章】何を(What )」すり合わせるか―すり合わせ9ボックス
・すり合わせるべき「3つのレベル」とは
・円滑な対話に必要な焦点とテーマ―「すり合わせ9ボックス」
・「型」を使えば口下手マネジャーでもうまくいく【第3章】
「どう(How)」すり合わせるか―しゃべってもらうスキル
・「ついしゃべってしまう」の構造
・質問するときのコツ1 相手に合意を取る
・質問するときのコツ2 詰問を探求に変える3つの「感」
【第4章】
「どう(How)」すり合わせるか―フィードバックするスキル
・ポジティブ・フィードバック
「認める」と「ほめる」の違いと構造
・チェンジ・フィードバック
「指摘」で終わるのではなく、「指摘」から始まる
【第5章】
「何を(What )」「どう(How)」すり合わせるか―業務レベル
・1on1だからこそできる「業務」の話をしよう
◯業務不安ボックス
・言葉にできない不安を探り当てる
・「業務不安」をすり合わせるポイント
◯振り返りボックス
・「メタ認知」が自分の行動を変える
・「感情の呼び起こし」が教訓をもたらす
◯業務改善ボックス
・「行動」のすり合わせはやり方を覚え、「考え方」のすり合わせはやりがいを見出す
・できる上司は自分の行動の手のうちをさらす
【第6章】
「何を(What )」「どう(How)」すり合わせるか―個人レベル
・なぜ、部下は今日も会社に出社しているのか
◯ライフスタイルボックス
・ライフスタイルのすり合わせが今、新しい価値をもたらす
・5つのテーマを全肯定で受け止める
◯パーソナリティボックス
・対話型マネジャーは個を意識した関わりをする
・対話の積み重ねが言葉を超えた相互認識をもたらす
◯将来キャリアボックス
・「勘違い退職」という悲劇
・上司はアドバイザーではなく、カウンセラーのスタンスで
【第7章】
「何を(What )」「どう(How)」すり合わせるか―組織レベル
・エンゲージメントはどうつくられるのか
◯理念・制度・カルチャーボックス
・会社のことを知らなくなった従業員
・うさん臭さを消すには文脈とタイミングがすべて
◯人間関係ボックス
・部下を取り巻く人間関係を知っているか
・部下にとって大切な3種類の社内関係者
◯組織方針ボックス
・マネジメントが「単なる連絡係」になっていないか
・なぜ多くの上司は「逆ホウレンソウ」できないのか
そもそも対話型マネージャーとは?
本書のタイトルにもある対話型マネージャーとは、
まだ使われていない部下のポテンシャルを引き出して、それを開花させる。
それを可能にするのが「対話」であり、それができるのが「対話型マネージャー」です。
著者の世古詞一さんは組織人事コンサルタントであり、1on1コミュニケーションの専門家。
実際に「働きがいのある会社」2015-2017中規模部門第一位の(株)VOYAGE GROUPの創業期より参画しているなど、数々の経験と実績をお持ちの方です。
実際に読んでみると、
本書のポイントでもある、「すり合わせ9ボックス」について詳しく解説されています。
「すり合わせ9ボックス」とは、「過去、現在、未来」というヨコ軸と「組織、個人、業務」のタテ軸を元に、9つの中からどの内容を話すべきか?どの順番で進めていくべきか?がわかりやすく解説されています。
この「すり合わせ9ボックス」を使うことで、対話中、思考が思わぬ方向にいってしまうことを防げたり、逆に、縦横に対話を移動するのを認識しながら、思わぬ良い着地点につけることもありそうです。
参照 : 対話型マネージャー 部下のポテンシャルを引き出す最強育成術
また、この表を元に、
・何(WHAT)をすり合わせるか?
・どう(HOW)すり合わせるか?
・業務レベルで何をどうすり合わせるか?
・個人レベルで何をどうすり合わせるか?
・組織レベルで何をどうすり合わせるか?
が詳しく書かれています。
例えば、業務改善をテーマにこの表の使い方を解説します。
例えば、「成果を上げるために、何かいいアイディアあるかな?」「品質を高めるためにできることはあるかな?」など、質問をしながら、部下に考えてもらいます。(業務改善の質問)
なかなか答えが出てこない場合は、もしかしたら、部下の中で未来の「業務改善」よりも、「現在の業務不安」が邪魔しているかもしれません。
その時は、「何か仕事をする上で気がかりなことはある?」など業務の不安を洗い出す質問をします。(業務不安の質問)
「実は、最近家族のことでちょっと問題がありまして。。。」と業務に集中できていない問題が浮き彫りになったりします。(ライフスタイルの項目)
「それなら、可能な範囲でいいから、ちょっと家族のことを教えてもらっていいかな?」(ライフスタイルの質問)
と聞くことで、業務の不安を生み出しているプライベートなことを部下が話してくれるかもしれません。
一旦、家族のことを話し終えれば、業務不安もなくなり、次回から業務改善の話を集中して話せる可能性が高いです。(次回のテーマとして業務改善)
参照 : 対話型マネージャー 部下のポテンシャルを引き出す最強育成術
このように、「すり合わせ9ボックス」のタテヨコを行き来しながら対話をすることで、入口を作りやすく、出口への流れも作りやすくなります。
この本では、上でとり上げたような「対話のスキル」の他にも、「部下にしゃべってもらえるようになるスキル」など、部下とのコミュニケーションスキルがびっちりと体系化されています。
実践に落とし込むまでには時間はかかりそうですが、これさえ抑えてしまえば、部下のポテンシャルを引き出すことでき、パフォーマンスは増していきそうですよね。
そんな本書が一番伝えたいことは、対話を通して、上司と部下の間にある「認識のズレ」や「ギャップ」をできる限りなくすために、上司が部下に対して興味を持ち続けることだと感じました。
自分が部下であれば、スキルはあっても、気持ちがない上司に対しては、心も開かないだろうし、仕事に対してのモチベーションなんて上がりっこないなと。
そんな中、部下の気持ちとポテンシャルを汲み取れる「対話型マネージャー」はこれから、必要とされるでしょう。
本書から得られた2つのこと
①組織レベル、業務レベルでなく、「個人レベルの対話」がカギを握る
個人的には、この「個人レベル」の対話が超重要なんじゃないか?と思いました。
というのも、会社という組織にいる限り、誰だって業務はやる必要があるし、組織の意向に従うのも当然だからです。
なので、ついつい組織のあるべき姿をただ押し付けてしまったり、効率化を図るあまり、その人の悩みのタネをスルーして、業務の改善のことばかりを話してしまいがちです。
それでは部下のモチベーションが上がるどころか、下がる一方です。
また、業務の改善を上司の一方的な成功体験を押し付ける形での解決では、自分で考える部下には育ちません。
そこで、部下本人が今興味を持っている内容に焦点を置きつつ、対話の流れの中から、業務や組織のことへ興味関心を移していくことで、部下は成長意欲を持ち、組織に貢献してくれるようになるはずです。
②対話内容の分配を事前にざっくり決めること
とはいえ、部下の個人レベルの話に合わせてばかりいては上司や会社にとって大事な話をすることができません。
そこで、事前に、どの内容をどの頻度で話すのか?を決めること。これがとても重要になるのかなと思いました。
参照 : 対話型マネージャー 部下のポテンシャルを引き出す最強育成術
例えば、上の図のように、組織レベルの話は月に1回、業務レベルの話は月に2-4回というように、年間の全体構想を練ります。
そうすることで、今週はこの話をして、来月はこの話をしようと事前に伝えることができ、上司も部下もある程度目安を立てられます。
即実践できる内容が他にも盛り沢山の本でした。
部下とのコミュニケーションだけでなく、人とのコミュニケーション全般に使える良書です。
ぜひ書店で手に取ってみてください。
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